9-8. 動物細胞へのDNA導入
https://gyazo.com/c46126ed3d416a19ff66aa9dd02da825
https://amzn.to/2I6DMZu
1) 化学物質を使ってDNA導入を促進する:トランスフェクション
通常は、コンピテント細胞を用いる大腸菌の形質転換に相当するトランスフェクション(DNA感染)によってDNAを細胞に導入する
トランスフェクションに用いる試薬のうち、リン酸カルシウムやポリエチレンイミンを使う方法ではDNAをそれら試薬との共凝集体とし、細胞の異物取り込み能で取り込ませる
人工脂質二重膜であるリポソームでDNAを包み(あるいは付着させ)、細胞膜と融合させる形でDNAを中に入れる方法は、リポフェクションという
細胞表面は負に荷電しているため、核酸は反発して細胞に接近しにくい
このため、トランスフェクション用試薬は一般に正電荷を持つ
DNA取り込み能をもつ細胞は集団の中の一部(数~数十%)と、その効率は必ずしも高くないため、導入細胞の特定や選別には、ベクター中のマーカー遺伝子の発言が必須
2) 物理的方法
物理的方法には、電気穿孔法、金粒子にDNAを付着させて力学的に細胞に打ち込むパーティクルガン法などがあり、大漁の細胞や、DNAの入りにくい組織などにDNAを導入するのに向いている
マウス卵などの大きな細胞では、顕微鏡下で微細ガラスピペットを使って注入させるマイクロインジェクション(微量注入法)が行われる
https://gyazo.com/e29953697c265a02bb9cf43b1c58de46
3) ウイルスベクターを用いる方法
哺乳類のウイルスはヒトやマウスなどの動物細胞に効率的に遺伝子を導入することができ、とりわけ個体を対称とする場合は最も有効な方法
使用されるウイルスベクターは通常増殖欠損型になっており、ウイルスとして増幅することはない
レトロウイルス
マウス白血病ウイルスなどは増殖中の細胞に感染し、RNAから逆転写されたDNAが宿主ゲノムに複数コピー組み込まれる
細胞を殺さないので、遺伝子安定発現細胞の作製に使われる
近縁のレンチウイルス亜科のウイルスは非増殖細胞にも感染できる
ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)はCD4陽性細胞にしか感染できない
他のウイルス
アデノウイルス
広い宿主域をもち、非増殖細胞にも感染できる
DNAがゲノムに組込まれず、一過的遺伝子発現を目的に使われる
アデノ随伴ウイルス
ヒトゲノムの特定部位に限定的に組込まれる
バキュロウイルス
昆虫細胞のみに感染し、タンパク質大量産生のために使用される
ワクシニアウイルス(痘瘡ウイルス)
種痘株(ワクチン株)が遺伝子導入の目的で使用されることがある
4) 細胞に入ったDNAの運命
細胞に入ったDNAはoriをもって複製しない限り、短時間で細胞から排除される
このため、導入遺伝子の発現は一過的発現にとどまる
ところが非相同組換え機構により、DNAが低い頻度でゲノムに組込まれる場合があり、このようにして遺伝子が組込まれた細胞は、導入遺伝子が恒常的に発現する安定形質転換細胞となる
この場合、組込まれるDNAは多コピーで、組込み場所もランダム